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変形性関節症

どんな病気

「変形性関節症」という名称は、関節をつくっている軟骨や関節包、骨などが、何らかの原因で変形し、機能的な障害や痛みを起こした状態を表す言葉で、病名ではありません。

関節が変形する原因としては、年齢を重ねることにより関節の老化現象として変形を起こす「一次性変形性関節症」と、骨折や靭帯損傷などの外傷や慢性関節リウマチ・痛風・化膿性関節炎などの病気のあとに発生する「二次性変形性関節症」に分けられます。一般的には加齢とともに現れる「一次性変形性関節症」のことを変形性関節症と呼びます。

一次性変形性関節症と二次性変形性関節症

人間は立って生活するため、体重がかかり酷使される膝関節や股関節(下肢の付け根)に変形が起こりやすいという傾向があります。したがって、中年以上の太った人の膝関節や股関節、力士の膝や腰椎、ピアニストやタイピストの指、野球選手の肘関節などに発症しやすいといえます。

たとえば膝関節の場合には、大腿骨・脛骨・膝蓋骨の3つの骨からつくられており、体重や外部からの衝撃に耐えながら柔軟に動くことができるよう強靭な「関節包」という組織に覆われています。この関節包の内側は、関節の動きを円滑にするための潤滑油である「滑液」を分泌する「滑膜組織」に囲まれています。そして、摩擦に強い「軟骨」が大腿骨と脛骨の端を覆い、運動中の摩擦を減らし、半月板は2本の骨の間のクッションの役目を果たし、関節内での体重を分散させています。また、内部に関節液を満たしている袋である「滑液包」は、骨を交叉して動く腱や皮膚のクッションとなり、膝の側面や背面にある靭帯は関節包を補強し安定を与えています。膝蓋骨は関節の前面を保護する役目を負っています。
このような膝関節のどの部分が変形するかによって症状は微妙に異なります。

とくに多くみうけられるのは、加齢とともにまず関節軟骨が変化を起こし、関節に機械的な刺激が作用し、半月板や骨の変形が生じ徐々に関節の機能障害を起こすことです。

どんな症状

変形性関節症では、膝関節の変形が最も多くみられ、日本人では畳の上の生活様式も原因に関与しているのではないかと考えられています。

初期の場合は、平地での歩行では痛みがなく、座った姿勢から立ち上がったときや、歩き始めようとしたときに痛みます。この痛みは歩き慣れると消え、疲れると再発し、休むと軽減します。症状が進むと、階段を下りるときなど膝に負荷がかかった際に痛みを生じることが多くなり、膝を曲げたり伸ばしたりすることが制限され、あぐらをかいたり正座することが困難になっていきます。そして、膝関節の内側を構成する「滑膜」に炎症が起きると「膝に水がたまる」関節水腫の状態を起こし、膝が腫れぼったい、重苦しい、曲げにくい、歩くとき膝がカクカクするなどの症状が現れます。さらに関節の変形が進むと、膝を曲げたときにゴリゴリ音がしたり、関節が伸びにくくなりO脚変形を生じ、痛みのために歩行が困難になります。

股関節の変形性関節症は、日本の場合、先天性股関節脱臼後の二次性変形性関節症が大部分のため、圧倒的に女性に多いといわれ、膝関節の場合より若い年齢で発病します。症状としては,長時間の歩行で痛み、股関節を開いたり、外へねじると痛みが増し、痛みはしだいに強くなるのが特徴で、安静にしていても痛むようになります。

指関節の場合は、指の一番先の関節だけの痛み、腫れ、変形が特徴で、この変形を「ヘバーデン結節」といい、ほとんどが更年期以降の女性にみられます。

どんな診断・検査

診察の際の問診や簡単な触診程度で、だいたい診断がつきます。特別の外傷や原因がなく発生した関節の痛みの場合、変形性関節症の可能性が高いと考えられます。

膝関節症の場合では、とくに40歳以上の女性で肥満傾向の人、中年期以降急激に体重が増加した人、急にウォーキングなど体重のかかる運動を始めた人などに多くみうけられます。

診断は、X線写真でほぼ確定されます。
X線写真の特徴としては、

  1. 関節軟骨がすり減って、関節のすき間が狭くなる。
  2. 骨の変形に伴い、関節の辺縁に骨のトゲような「骨棘」(コツキョク)ができる。
  3. 関節の変形によるO脚化がみられる。
変形性関節症のX線所見

このようなX線写真の特徴から、慢性関節リウマチや痛風などの病気と区別します。
血液検査では、変形性関節症は異常がないことが多く、他の疾患と鑑別するために行われます。
まれに、関節鏡やMRI検査も行われますが、詳細な靭帯損傷、半月板の精密検査のためであり、手術などを考慮して行われる場合がほとんどです。

どんな治療法

変形性関節症は、関節の磨耗や老化が原因で起こるため、現在のところ関節を若返させるような根本的な治療法はありません。治療は、痛みを和らげ、残された関節の機能低下を防ぎ、これ以上病状を進行させないための保存的治療法が原則となります。

治療法としては、まず患部を冷やさないことであり、サポーターなどで保護するとともに、杖などを使用したり、重いものを持たないなどして関節への負担を軽くします。

また、温熱療法は血行を良くし筋肉の緊張をとり、関節の痛みを和らげます。とくに入浴中には、関節を十分動かすように心がけます。

膝関節を冷さない・入浴中の体操

薬を用いての治療法としては、湿布や軟膏といった外用薬、内服薬、関節内注射があります。

湿布では、関節が冷えると痛みが悪化することが多いので、温湿布が効果的ですが、一般的にはかぶれる人が多いために冷湿布が処方される場合が多くなります。しかし、これは決して冷やすためのものではなく、炎症と痛みを抑える成分を含んだ湿布です。冷える場合には、その上にカイロなどで保温すると効果的です。

痛みの強いときは、消炎鎮痛剤として、内服薬や坐薬も痛みの軽減には効果がありますが、決して関節を修復するものではありません。したがって、痛みが強い場合にだけ服用するようにしましょう。

関節内への注射薬としては、関節の軟骨代謝を活性化し、 潤滑剤としての役割をするヒアルロン酸ナトリウムという薬を主に使用します。症状が重く痛みが強い場合には、副腎皮質ステロイド薬を使用します。ステロイド薬の関節内注射は非常に効果がありますが、頻繁に繰り返すと副作用が現れ、急速に変形が進行することがあります。

関節に水がたまる「関節水腫」がみられるときは、その程度により注射器で水を抜きます。関節液が大量の場合には、痛みと重苦しさが強く、温熱療法や低周波療法、レーザー療法などの物理療法では症状の改善が得られにくいからです。
そしてこれは診断のためでもあり、水が溜まる原因が炎症(痛風、リウマチ、化膿性関節炎など)によるものか、炎症に関係しない(変形性関節症による)ものか、または、血液(外傷など)なのかを調べることもできます。

このような治療をしても痛みが強くなり変形が進むときは、力のかかる部位を変えるための足底板等の装具療法や、関節の適合性をよくするための骨切り手術がすすめられます。
60歳から65歳以上の高齢者で、関節の破壊がひどい場合は、人工膝関節や人工股関節による関節形成術が検討されます。

どんな予防法

長年、体重が加わり酷使される関節にとって変形性関節症は宿命的なことです。
肥満は、関節に大きな負担となります。、バランスのとれた食事療法と適度な運動で体重を減少させることが大切です。

また、ストレッチや適切な運動は、健康な軟骨を維持して、関節の可動範囲を増やし、衝撃がうまく吸収されるように周囲の筋肉を強化するのに役立ちます。
エアロビクスやウォーキングなど体重のかかる運動は、健康には良いのですが、膝関節の場合には、負担をかけ悪化させる原因になります。体重のかからない水泳や座った姿勢での屈伸運動などで筋力強化することがよいでしょう。

おもな治療薬

1. 内服薬
・ロキソニン
・インフリーSカプセル
・レリフェン錠
・インテパンSPカプセル
・ボルタレン錠
・フルカムカプセル  等
2. 外用薬
・モビラート軟膏
・インテバンクリーム
・アドフィード貼布剤
・セラスター貼布剤  等
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