喉頭がんは、声門に多く(60~70%)、声門上(30~40%)、声門下(少数)にできるがんです。喉頭がんは圧倒的に男性に多い病気です。(女性の約10倍)なかでも、高齢男性、特に60歳代がもっとも高くなっています。
喉頭は、空気の通り道であったり、声を出すところであったり、食べ物や飲み物が気管に入らないようにするところであったりと、さまざまな役割を担っています。
一般に「のどぼとけ」と呼ばれているところは、喉頭の甲状軟骨の出っ張った部分に当たり、この少し下に声帯があります。声帯のあるところが声門、声門より上を声門上、下を声門下と、喉頭は3つの領域に区分されています。
喉頭がんは、声門に多くできるがんで、全体の60~70%を占めます。次いで声門上にできるがんは30~40%、声門下にできるがんはきわめて少数です。ただし、女性では声門がんが少なく、声門上がんのほうが多くみられます。
喉頭がんの発生率の男女比はほぼ10対1で、圧倒的に男性に多い病気です。なかでも、高齢の男性に多くみられ、60歳代がもっとも高くなっています。
喉頭がんになりやすい危険因子としては、喫煙、飲酒、放射線被爆、乳頭腫の存在などがあげられ、とくに喫煙は重要なファクターとして注目されています。その危険性は、肺がんよりも高いといわれています。
がんの発生する部分により初期の症状は異なります。
声門がんでは、声がかすれたり、かれたりする(嗄声/させい)といったことが生じ、声門上がんでは、のどに何かあるような異物感を感じたり(咽喉頭異和感)、飲み込むときに痛みを感じる(嚥下痛)ことから始まって、少し経つと声がかすれたり、かれたりします。
声門下がんの初期は無症状ですが、進行すると嗄声や呼吸困難などが生じます。
頸部リンパ節転移は声門がんでは少ないのですが、声門上がんでは比較的多く、首の腫れやしこりなどが初期症状として認められることがあります。
進行がんになると、呼吸困難や飲み込み(嚥下)障害などをきたします。
診断は、間接喉頭鏡もしくはファイバースコープで喉頭内を観察し、腫瘍があるかないかを観察し、疑わしい部分があれば生検(病変の一部を採取する)を行って、病理組織診で確定します。
生検は通常、外来で局所麻酔(のどの表面に麻酔をする)してファイバースコープを使ってしますが、咽頭反射の強い人は全身麻酔をかけて喉頭直達鏡を口から挿入して手術用顕微鏡で観察しながら行うこともあります。
どれくらい病変が広がっているのか、進展範囲の把握のために、症例に応じて頸部単純X線、CT(コンピュータ断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像診断)などの画像検査を行います。
また、口腔・咽頭がん、食道がんなどを併発する頻度が比較的高いため、これらのがんの有無を確認するための検査を行うこともあります。
喉頭がんは、頭頸部がんのなかでは比較的治りやすいがんで、治療の目標は喉頭機能を保存しつつ、治癒率を向上させることです。そのため治療法は、腫瘍ができた部分、どこまで病変が広がっているか(進展範囲)がんの種類(病理組織像)などによって異なります。一般に早期の喉頭がんでは、放射線治療がまず行われることが多いようですが、発生した部分、組織型(がんの種類)によっては、最初から手術(可能なかぎり喉頭部分切除術)で、がんを取り除くこともあります。
腫瘍の発生した部分、進行度別に標準的な治療法について記しておきますので、参考にしてください。なお、喉頭がんの進行度は、早期のものから順にT1~T4の4段階に分類されています。また、ここでは主として喉頭がんのほとんどを占める扁平上皮がんに対する治療法について紹介します。
いずれの部分も放射線の治療後に再発した場合は、多くは喉頭全摘術が必要になりますが、症例によっては喉頭部分切除術が可能なこともあり、その見極めが重要になってきます。喉頭全摘術を行う場合は、天津法などの手術的方法により術後の発声機能の回復をはかることがあります。頸部リンパ節転移に対しては、頸部郭清術が行われます。
喉頭全摘を受けた場合、音を出す声帯も取ってしまうため通常の音声機能は失われてしまいます。しかし、声帯に代わる新たな音声機能を獲得するために、次のような方法が考え出されています。
手術後あるいは放射線治療後は担当医の指示により定期的に通院する必要があります。
当院では、治療後1年間は1か月に1回程度、その後は少しずつ通院する間隔を延ばし、5年以上経過しても状態が良い場合は半年に1回程度の通院にしています。
通院では、ファイバースコープで喉頭を観察し、頸部を触診してリンパ節転移がないことを確認しています。ときにはCTなどの画像診断も行います。
喉頭がんの予後は比較的良好で、5年生存率は I 期で90%以上、全体で60~70%という成績が得られています。