糖尿病はとても増えています!
日本をはじめ、世界中で糖尿病になる人が激増しています。1998年のデータによると、日本人で糖尿病にかかっている人は690万人、40歳以上では10人に1人の割合になります。糖尿病になると、いろいろな合併症が引き起こされ、それによって健康な生活が送れなくなる可能性があります。
血液中のブドウ糖はとても大切な働きをしています。食後、食べ物が小腸から血糖として吸収され、それが肝、脂肪、筋肉などの細胞に入ります。食事をしていない時には肝臓に蓄えられた糖が、再び血糖になって体内に戻り、ある一定のレベル以下には血糖が低下しないよう調節されています。
血糖が肝臓や脂肪、筋肉などの細胞の中に取り込まれると、血糖は下がります。そのために、必要な物質は膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンです。血糖が上昇すると、膵臓からインスリンが分泌されて、肝、筋肉、脂肪細胞などの細胞膜上のインスリン受容体に結合し、糖を取り込むように指令を出します。すると細胞膜上の糖の運び屋(糖輸送担体)が働き始め、血糖が細胞内に取り込まれるのです。
血糖が病的に上昇するのは、インスリン受容体の働きが悪くなる場合が多く、肥満、食べ過ぎ、運動不足、アルコールなどの悪い生活習慣が受容体の働きを低下させてしまいます。インスリンの働きが悪くなる状態をインスリン抵抗性またはインスリン感受性の低下といいます。
2型糖尿病の場合、遺伝的な素質に生活習慣などが複雑にからみ合って発病します。両親・兄弟・祖父母・親の兄弟などに糖尿病の人がいると遺伝的に糖尿病になりやすい可能性があります。しかし、昔は素質があっても発病しない人が多かったため、親戚に糖尿病の人がいないからといって安心はできないのです。
1型糖尿病は遺伝的な背景は薄く、ウイルス感染などが引き金になり、免疫反応が関連すると言われています。
糖尿病になると、長い期間をかけてさまざまな合併症が出てきます。
糖尿病の3大合併症とは糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害をいいます。また、動脈硬化が促進され、心筋梗塞(コウソク)、狭心症などの冠動脈疾患、脳梗塞、足の閉塞性動脈硬化症になりやすくなります。そのほか、感染症になりやすい、傷の治りが遅い、歯肉炎・歯周囲炎を起こしやすいなど全身に合併症が現れる可能性があります。
糖尿病性網膜症は眼の奥の網膜に浸出物が出たり出血が起きて、
ひどくなると失明してしまいます。
糖尿病性腎症は尿蛋白が増え、腎不全から透析に至ります。
糖尿病性神経障害は足のしびれの原因となる末梢神経障害や靴づれなどの傷から足を切断するに至る壊疽(エソ)、胃腸・便通障害や排尿障害・インポテンツなどの自律神経障害があります。
糖尿病とは、血液の中のブドウ糖(血糖)がある一定のレベルを超えた状態が慢性的に続く状態をいいます。
空腹時血糖(食後8時間以上絶食)で126mg/dl以上もしくは、ブドウ糖負荷後2時間血糖や食後血糖が200mg/dl以上だった場合、糖尿病であると診断できます(2回確認する)。血糖が180mg/dl前後以上ならないと尿糖が出ないため、糖尿病の診断には尿糖を調べるのではなく、血糖を調べる必要があります。
また、血糖が正常より高い人を境界型といい、将来的に糖尿病になりやすく、動脈硬化も促進されやすいと言われています。
糖尿病の治療の基本は、血糖をできるかぎり正常に近くすることです。これにより合併症の予防も可能です。しかし合併症のなかでも動脈硬化性疾患は血糖だけ良くても発病を食い止めることはできません。高血圧、肥満、喫煙、高脂血症(コレステロール・中性脂肪)または低HDL(善玉)コレステロール血症などの他の動脈硬化促進因子も管理・治療することが大切となります。糖尿病の治療で参考になる本の代表としては「糖尿病治療の手引き」と「食品交換表」(日本糖尿病学会)があります。生活習慣を改善することは、インスリンの働きをよくすることでもあり、血糖の正常化に効果的です。
それには、定期的な検診が最も大切です。糖尿病はほとんど症状がないため、年に1回は必ず血糖採血を含む検診を受けるのが大切です。尿糖は血糖があまり高くないと陰性になりますので、安心できません。空腹時血糖が正常でも食後血糖が上昇していることがあるので、1度でも血糖の異常があったり、糖尿病の親戚がいたり、肥満の人などはブドウ糖負荷試験という詳しい検査を受けることをおすすめします(年1回)。
そして、日常生活では食事・運動などの生活習慣を改善し、肥満を解消しましょう。食事は1日3食バランス良く少しずつ食べます。夜のドカ食い、朝食を食べないなどは良くありません。また、アルコールの1日の適量はビールで500cc程度に。飲み過ぎには気をつけてください。
減量は、標準体重より多い人は標準体重を目標にしましょう。標準体重以下の人はウエストを85cm未満にするようにします。前述しましたが、若い頃の体重はその人にとって理想体重だと思われるので、少しでも近づくようにしましょう。