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病気の知識

パーキンソン病

どんな病気
黒質、Lewy小体

パーキンソン病とは脳の真中にある中脳の黒質という部分の神経細胞が壊れることで起きる病気です。脳の神経細胞どうしは神経伝達物質とよばれるもので、連絡を取り合います。このうちドーパミンという神経伝達物質が黒質と線状体では連絡に使われています。ドーパミンを作る黒質の細胞が壊れてしまうので、線状体も働かなくなります。いまのところ原因は不明ですが、遺伝性のものもあります。パーキンソン病は通常50歳以上の人に発症し、我が国では10万人に100人程度の発症率で、比較的頻度の高い慢性進行性の神経変性疾患です。


どんな症状

自覚的には手に起こる安静時の震え、動作がのろくなります。歩行がスムーズにできなくなります。この症状は診察すると安静時振戦、筋固縮、寡動(かどう)・無動、姿勢反射障害の4つの要素からなっています。

1)安静時振戦
じっとしているときに指先に比較的、ゆっくりした一秒間に4-6回(4-6Hz)のふるえが起きます。指先に目立ちます。
2)筋固縮
からだの動きが硬くなり、スムーズに動かなくなります。人が動かそうとするとギシギシと歯車のような動きになります。
3)無動・寡動
顔に表情がなく、じっとしたまま動かなくなります。仮面様顔貌、低く単調な話し声、動作の緩慢、寝ているところから立ちあがる時の姿勢変換がうまくできなくなります。
4)姿勢、歩行障害
歩行は前に傾き、手の振りがほとんどなくなります。歩幅は狭く、こきざみな歩行になります。狭いところや、動き始めのとき、床に足が貼り付いたように、動けなくなるfrozen gait とよばれる症状がみられます。

以上の4つが代表的な症状ですが、全てがそろっている訳ではありません。しかし、このうち筋固縮と無動は必須の症状です。
その他に合併する症状として自律神経症状があります。便秘、起立性低血圧などです。痴呆も末期には見られる症状です。
最初は右か左のどちらかに症状が強く出ますが、次第に両側性になります。全経過は15年から20年と言われ、末期には寝たきりとなり、抗パーキンソン薬も効果がなくなり、肺炎などの感染症が起こってしまいます。

どんな診断・検査

一般的な検査やCT、MRIなどの脳の画像診断では特徴的な所見はありません。特殊なMRIを行うと中脳の異常を見つけることができるばあいがありますが、普通は異常がなく、症状と経過で診断します。CT、MRIで脳梗塞や脳萎縮などが強い場合はパーキンソン病の可能性よりも脳血管性のパーキンソン症候群である可能性が強くなります。その場合は使用する治療薬が変ります。
典型的な症状がでてくれば神経内科の医者であれば診断は簡単に下せます。しかし、初期のふるえだけのときは、なかなか診断をすることが難しいものです。

どんな治療法

抗パーキンソン薬と呼ばれる薬がいくつもあり、劇的に症状が改善します。これらの薬は基本的に脳内に不足したドーパミンを補ったり、ドーパミンの放出促進によって症状を改善します。中でも治療薬の主体はLドーパと呼ばれる薬で、メネシット、マドパーなどがあります。その作用を支えるために、アーテン、シンメトレル、パーロデル、エフピーなど様々な作用を持つ薬があります。しかし、Lドーパは長期に使っていると効きが悪くなったり、その血中濃度に関連した症状の日内変動(wearing off現象)が起こったり、急に動けなくなるオンオフ現象と呼ばれる症状が出ることがあります。ですから若い人や軽少の人には最初にLドーパを使わずに別の薬から開始することが多いようです。どうしてもLドーパを使わなければいけない時は少量使用し、別の薬をかぶせたりします。長い病気で、薬で症状の改善がある病気ですから、専門の神経内科医に診てもらうほうがいいでしょう。
一方十分な薬物が投与されているのに効果がなくなってきた時、on-off、wearing off現象が現れた場合、また薬物の副作用により薬物投与ができない場合はパーキンソン病に対する外科手術が行われる場合があります。パーキンソン病に対する外科手術は以前から定位脳手術として視床や淡蒼球を電気的に焼く破壊手術が行われてきました。最近では定位脳手術を行い脳の決められた部位に電極をおき、それを刺激することにより、症状を軽減させる脳深部刺激法がよく行われるようになってきました。片方の視床下核を刺激すると振戦、強剛、寡動、無言に効果があり、両方の視床下核を刺激すると歩行障害にも効果があるといわれています。これからの治療ですが、薬物を使用しても進行し、困っている場合には期待できる方法です。他に胎児の細胞や別の細胞を脳に移植する方法も試みられています。

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鑑別診断

パーキンソン病と同じような症状を示すものを、パーキンソン症候群といいます。その原因で一番多いのは脳梗塞です。それも小さな脳梗塞がたくさん起きた場合の多発性脳梗塞の症状として、見られます。他にも向精神薬などの副作用でパーキンソン症候群になることもあります。いずれの場合も、パーキンソン症候群では、Lドーパなどが効きません。他の薬品を使用します。

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